ティファニーランプは、今からおよそ140年ほど前にアメリカで誕生し、美しい色彩と優れたデザイン性をそなえたテーブルランプとして、当時の市民の心を虜にしました。
ティファニーランプとは、あのジュエリーブランド「ティファニー」の創業者の息子、ルイス・コンフォート・ティファニーが生み出したステンドグラスのランプのことです。
この記事では、ティファニーランプについて、詳しく解説していきます。
ぼくも一応「空飛ぶ宝石」と呼ばれているから、綺麗なランプには興味がありますよ。
でしょ? この記事を読んで、ティファニーのランプについて詳しくなっちゃいましょ!
一度見ると、忘れられない印象を与えるティファニーランプ。
ティファニーランプは『ジャポニズム』の影響を色濃く受けているとも言われています。日本人にもファンが多いのは、私たちに馴染みのある雰囲気が備わっているからなんですね。
ティファニーのジュエリーだけでなく、この機会にティファニーランプについての知識を身につけてみませんか?
ティファニーランプの歴史と背景
美しい色彩を豊かに用いたティファニーランプは、見るものを強く惹きつける魅力があります。
ティファニーランプは、アール・ヌーヴォーを代表する芸術家ルイス・コンフォート・ティファニーによって生み出されました。
まずはティファニーランプの歴史や背景を学びましょう。
ルイス・C・ティファニーの経歴
1848年 | ニューヨークの宝石店「ティファニー商会」の創立者チャールズ・ルイス・ティファニーの長男として生まれる |
1875年 | ガラス工芸に興味を持ち、ブルックリンのガラス製造所で働き始める |
1879年 | 最初の事業である装飾会社を立ち上げる |
1880年 | ナショナル・アカデミー・オブ・デザインの正会員になる |
1882年 | ホワイトハウスの内装を手掛ける |
1885年 | 最初の会社を解散し、新たにガラス工芸スタジオを立ち上げる |
1893年 | 新工房をニューヨークに立ち上げる |
1900年 | パリの万国博覧会に作品を出展。アール・ヌーヴォーの第一人者としての名声を得る |
1902年 | 父チャールズ死去。ティファニー本社のデザイン・ディレクターに就任、ジュエリーをデザインする |
1918年 | ティファニー本社の顧問職を辞す |
1933年 | ニューヨークにて死去 |
ニューヨークのジュエリーブランド「ティファニー商会」の長男として、1848年、つまり、今からおよそ180年ほど前にルイス・コンフォート・ティファニーは生まれました。
彼は父親の影響を受けつつも、家業を継ぐことはせず、独自の道を歩むことに。絵画やインテリアデザイン、ガラス工芸など多岐にわたる分野を学び、その中でも特にステンドグラスの分野で名を馳せました。
実家の宝石店を凌ぐほどの知名度を得たティファニーですが、父の亡き後は、ティファニー社のジュエリーブランドのデザインを手掛け、美しいジュエリーの数々を残しています。
ティファニーランプが生まれた背景
ティファニーランプが生まれた背景には、経済的な事情があったとも言われています。
ルイス・コンフォート・ティファニーが情熱を注いだのは、絵画のように美しいステンドグラスの制作です。
研究熱心なティファニーは、ステンドグラスの第一人者として認められ、アメリカ各地の教会や建築物の装飾を請け負っていました。しかし、その一方で、ステンドグラスを製作する際に出るおびただしいガラス片の存在が彼の悩みの種となっていました。
そこで、このガラス片を無駄なく活用するために、テーブルランプが制作されたのです。
ステンドグラスの技法を用いて作られた美しいランプは、市民の間でたちまち大人気を博しました。
彼は、花や植物、蜻蛉(トンボ)など、自然からインスピレーションを得た装飾的なデザインのランプを数多く制作し、当時の人々の心を魅了したのです。
ジャポニズムの影響
19世紀後半、日本の美術や工芸が西洋に紹介され、多くの芸術家がその影響を受けました。
ティファニーの作品にもジャポニズムの影響が色濃く見られます。
ティファニーのランプは「アール・ヌーヴォー様式」と呼ばれますが、この「アール・ヌーヴォー様式」こそが、実は『ジャポニズム』、つまり日本の影響を色濃く受けた芸術運動なのです。
ティファニーのランプにも、花や植物、生き物などの自然モチーフなど、日本の自然や装飾の美しさを取り入れたデザインが多く見られます。
ティファニーがアール・ヌーヴォーに果たした役割
アール・ヌーヴォーとは?
フランス語で「新しい芸術」という意味よ。19世紀末から20世紀初頭にかけて、パリを中心に流行したの。
アール・ヌーヴォーを代表する作家は?
エミール・ガレ、ルネ・ラリック、ロートレック、アルフォンス・ミュシャ、ガウディなどが有名よ。
ティファニーは、アメリカ国内の装飾作家の第一人者、また、世界的芸術家として、アール・ヌーヴォー運動の重要な一翼を担いました。
アール・ヌーヴォーは、花や植物などの自然の形や、装飾的な曲線を重視する芸術運動であり、ティファニーの作品はそれらの特徴がよく表現されています。
ティファニーが生きていた当時、彼の生み出すあらゆるデザイン製品は常に大人気でした。ティファニーはランプだけでなく、花瓶やジュエリーボックス、食器、家具など、日用品のデザインも手掛けていました。
ティファニーとエミール・ガレ
ティファニーのランプを語る際、比較対象としてよく出てくるのが、フランスのガラス工芸家エミール・ガレです。
彼の作品は、植物や花、昆虫などの自然をテーマにしたモチーフを繊細なデザインで表現し、華やかで幻想的な雰囲気が特徴です。
アール・ヌーヴォー運動を代表する芸術家として、ティファニーとガレは互いに影響を与え合い、遠く離れていても切磋琢磨し合いました。
つまり、良きライバルってところね!
ティファニーは、ガレの作品に触発され、自然の美しさをガラスで表現することに強い関心を持ちました。ガレは、ティファニーのステンドグラス作品にも大きな影響を与えた人物と言えます。
ステンドグラスの「ティファニー方式」
ティファニーランプに使われているステンドグラスの技法は「ティファニー方式」と呼ばれています。
【ティファニー方式】
ガラスの周りに銅箔を巻き、ハンダで繋ぐステンドグラスの技法。
それまでステンドグラスは「ケイム式」という、鉛の溝にガラスをはめ込む技法で制作されていました。
(現在でも窓やドアなどの平面のステンドグラスを製作する際に使われています)
しかし、ティファニーが独自に考案した「ティファニー方式」により、絵画のように美しいステンドグラスの表現が可能になったのです。
また、銅箔を巻いた小さなガラス片をハンダで繋ぎ合わせることにより、耐久性に優れ、曲面を形作ることが可能になりました。
ティファニーランプの美しさは、繊細なデザインを可能にする技法によって支えられていたのですね。
むかし高校の美術の授業で作ったステンドグラス、ティファニー方式で作っていたことがわかりました…!
ティファニーランプの人気デザイン
ティファニーランプの代表的なデザインモチーフと、人気のあるデザインを解説します。
使用されているモチーフ
ティファニーランプは、自然界の花や生き物などをモチーフにした美しいデザインが特徴です。
- 自然のモチーフ
藤やスイレン、シャクヤク、ケシなどの花、樹木、トンボや蝶などの昆虫 - パターン模様
アール・ヌーヴォー風の曲線的な模様や、幾何学的なパターン模様
人気のデザイン
ティファニーランプで当時から人気のあったデザインをいくつかご紹介します。
「Dragonfly(トンボ)」
幸福や幸運を象徴すると言われているトンボのモチーフ。ティファニーのジュエリーにも度々登場しますが、ランプのデザインとしても、昔も今も非常に人気のあるデザインです。
色鮮やかなガラスで表現されたトンボのデザインは、他に類を見ない独特の存在感で輝きを放っています。
「Lotus(蓮)」
蓮の花をテーマにしたデザインで、花びらの美しさと優雅さをガラスで表現しています。
「Cobweb(蜘蛛の巣)」
蜘蛛の巣をモチーフにしたデザインで、細かいガラス片を使って繊細な蜘蛛の巣の模様を表現しています。
「Wisteria(藤)」
藤の花をモチーフにしたデザインも非常に人気がありました。細かいガラス片を使って、滝が流れ落ちるように咲き誇る、藤の花の繊細で圧倒的な美しさを表現しています。
ここでご紹介したのは作品のごく一部です。
「Dragonfly(トンボ)」や「Lotus(蓮)」などは異なるデザインのものが存在しますし、他にも数えきれないほどの美しいランプが制作されました。
ティファニーランプの価格と価値
本物のティファニーランプは希少価値があり、現在ではミュージアムでのみ目にすることができるような逸品です。
ティファニーのランプの価格ってどれくらいなんですかね?
う~ん、手に入れることはなかなかできそうにないし、かなり高価なんじゃないかしら。
3億円で落札されたランプ
1997年にクリスティーズのオークションで落札された価格は、当時の日本のレートで約3億4千万円。
「レッドロータス(赤い蓮)」というこの作品は特に希少価値が高く、非常に高額で取引されました。制作当時のカタログ価格は750ドルだったというから驚きですね。
このランプがこれほど高額で落札されたのは、その美しさや希少性はもちろんのこと、ティファニーランプがアール・ヌーヴォーの象徴として、非常に高く評価されているからです。
ティファニーによるこの美しいランプが、もう二度と生産されないと思うと、その歴史的価値に重みを感じますね。
ティファニーランプの価格相場
本物のティファニーランプの価格は、デザインや保存状態、製作年代によって異なりますが、一般的には数百万円ほどと言われています。場合によっては、さらに高額であってもおかしくありません。特に保存状態が良く、希少なデザインのものは高額で取引される傾向にあります。
しかし、そもそもが希少であるため、市場に出回っていることは稀だと考えた方が良いでしょう。
「なんでも鑑定団」でも、なかなか本物は出ていないようですよ。
「ティファニーランプ」として販売されているランプの価格
ステンドグラス専門店、ランプや照明の専門店、あるいはECサイトなどで現在「ティファニーランプ」として販売されているものは、ティファニーランプの、いわばオマージュ品です。
商品名としての「ティファニーランプ」という言葉は、単に「ステンドグラスのランプ」という意味で使われていることもあります。
この場合の価格相場は、数千円から数十万円。
職人の方にオーダーしてステンドグラスのランプを制作してもらう場合は、ティファニーランプの雰囲気を楽しむことができます。
日本でティファニーランプを見られる場所
ここまで読み進んできたあなたは、ティファニーランプの美しさに心惹かれ、「実物を見てみたい!」と思われたかもしれませんね。
本物のティファニーランプはなかなか目にする機会がありませんが、実は、日本にもティファニーランプの実物を鑑賞できる場所があるんです。
その名も「ニューヨークランプミュージアム&&フラワーガーデン」。
静岡県伊東市にありますよ。
【ニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデン】
場所 | 静岡県伊東市富戸841-1 |
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営業時間 | 9:30 – 17:00(季節により変動あり) |
定休日 | 無休 |
料金 | 大人(中学生以上): 平日1,500円、土日祝1,600円 小学生: 平日700円、土日祝800円 幼児: (4歳以上):400円 |
電話番号 | 0557-51-1128 |
公式サイト | https://nylfmuseum.com/ |
ニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデンは、日本で唯一、ティファニーランプを常設しているミュージアムです。
本物のティファニーランプが多数展示されており、その卓越したデザイン性や、色彩の美しさを間近で楽しむことができるなんて、ワクワクしてきますね!
アール・ヌーヴォーや、ティファニーランプに興味がある方は、ぜひ訪れてみてください。
近隣には動物園や温泉もあるから、お出かけや旅行にも良さそうです!
「ニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデン」がオープンする以前は、静岡県伊東市に「ティファニーミュージアム」が、島根県の松江市に「ルイス・C.ティファニー庭園美術館」がありました。
残念ながら「ルイス・C.ティファニー庭園美術館」は2007年に諸事情により閉館しています。
しかし、静岡県の「ティファニーミュージアム」は2017年12月にリニューアルし、現在の「ニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデン」として、再びティファニーランプの魅力を伝える場としてオープンしました。新しいミュージアムではフラワーガーデンも併設されており、四季折々の花々を楽しむことができます。
ティファニーランプとは? まとめ
ティファニーランプについて解説してきました。
- 宝石商ティファニー社の創業者の息子として生まれたルイス・C・ティファニーによって生み出された
- 彼は、アール・ヌーヴォーを代表する芸術家として、数多くの素晴らしいステンドグラスやテーブルランプ、日用品などをデザインし、制作した
ティファニーランプが生まれた背景には、ステンドグラスを製作する際に出るおびただしいガラス片を有効活用するという経済的な事情がありました。
しかし、そのおかげで芸術品ともいえるあの美しいランプが誕生したと思うと、事のなりゆきの不思議さを感じますね。
現在でも、ティファニーランプの芸術性の高さや美しさは、多くの人々に感動を与えています。
ティファニーランプの歴史と価値を理解したあなたは、ティファニーランプの世界にすでに一歩踏み込んだも同然です。
ぜひ、ティファニーランプの美しさを楽しみ、感動を味わってくださいね。
これでティファニーのランプについての知識はバッチリね!
(ティファニーランプ、綺麗だったな……!)