アルフォンス・ミュシャは19世紀末~20世紀初頭に活躍したチェコ生まれのイラストレーター、画家です。
ミュシャの絵といえば、装飾的で優美な曲線美、花で飾られた神秘的な女性像が特徴的。
アルフォンス・ミュシャの名前を知らない人でも、1度はどこかでミュシャの絵を目にしたことがあるのではないでしょうか。
日本ではミュシャの絵はとても人気があり、定期的に展覧会が催されています。私も高校生の時に初めてミュシャに出会った時に大好きになり、それ以来、ミュシャの展覧会には何度も足を運んでいます。
インテリアとしても人気が高く、「ミュシャの絵を部屋に飾りたいかも…?」ぐらいに思っている方は、実は非情に多いかもしれませんね!
しかし、現実問題として、ミュシャの絵はどこで買えば良いかご存知でしょうか?
この記事を読んでミュシャの絵画への理解を深め、ミュシャの絵を飾りたいという気持ちになってもらえたら嬉しいです。
この記事を読むと次のようなことがわかります。
- ミュシャの絵の種類や特徴を知ることができる
- ミュシャの絵画販売店などの情報を得ることができる
- ミュシャの絵を選ぶときのポイントや注意点を学ぶことができる
ミュシャの絵には、アール・ヌーヴォーの美しさと華やかさが凝縮されています。
それでは、さっそくミュシャの絵についてご紹介していきますね。
ミュシャとは? アール・ヌーヴォーの代表的な画家の経歴と作風
ミュシャがどのような人物か、ご存知ですか?
その背景を知っておけば、ミュシャの絵を鑑賞したり購入する際に、より深く味わって楽しむことができます。
ここではごく簡単に、その経歴と作風について触れておきますね。
ミュシャの生い立ちから女優サラ・ベルナールとの出会いまで
アルフォンス・マリア・ミュシャは1860年にチェコのモラヴィア地方に生まれました。
中学入学後、教会の聖歌隊に入り音楽家を志したこともありましたが、声変わりにより聖歌隊を退団。それに伴って奨学金を打ち切られ、中学を除籍となります。中学校を中退後は、裁判所の書記の仕事に就きました。
幼い頃から絵を描くのが好きで、17歳の時に画家を志してプラハの美術アカデミーを受験するものの、不合格。その後はウィーンに移り住み、舞台装置などを作る工房で働きながら、夜間学校に通って絵を描き続けました。
しかし、劇場の火災により職を失ってしまいます。
その後、ウィーンを去ってミクロフ(チェコ)に移り住みました。
そこで出会ったクーエン伯爵の援助により、ミュンヘン美術アカデミーに入学、28歳でパリのアカデミー・ジュリアンに通うことができました。
ミュシャは志望していた美術アカデミーに落ちたり、火災や失業などに遭遇したりと、決して順風満帆なスタートではありませんでした。
34歳の時、偶然にも大女優サラ・ベルナール主演の演劇『ジスモンダ』のポスターを手がけたことで、ミュシャは一躍名声を得ることになります。その後サラ・ベルナールと正式に契約を結び、ポスターや装飾パネル、舞台衣装なども担当し、活躍の場を広げていきました。
アール・ヌーヴォーの代表的な画家としての活躍
ミュシャは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した、アール・ヌーヴォーと呼ばれる芸術運動の代表的な画家です。
アール・ヌーヴォーとはフランス語で「新しい芸術」を意味し、花や植物の有機的な曲線美や、優美な装飾性をそなえた芸術様式のことです。
ミュシャの絵というと、長い髪や豪華な衣装をまとった女性の姿、花や星などの装飾的なモチーフ、曲線や円形の構図などが特徴的ですね。
加えて、ミュシャは当時ヨーロッパで流行していた「ジャポニズム」からも多大な影響を受けており、ミュシャの作品に多い縦長の作品は、日本の掛け軸などからインスピレーションを受けていたと言われています。
輪郭線を描かない油絵に対し、ミュシャの絵には日本の浮世絵のような(あるいは漫画のような)輪郭線があり、そこに色彩が施されています。
つまり、ミュシャの絵は日本人にどことなく馴染みがある画風と言えるでしょう。
購入前に「リトグラフ」について知っておこう
ミュシャの絵は、「リトグラフ」と呼ばれる技法で制作されています。
リトグラフとは、石に油性の絵の具を塗って紙に転写する版画のことです。ミュシャはこの技法を用いて、ポスターや装飾パネルなどのグラフィックデザインを中心に活躍しました。
ミュシャの絵の制作にこの技法を用いるのは、ミュシャが生存していた当時も今も変わりません。
版画だから、同じものがたくさん存在するの?
その通りよ。でも、通常私たちが購入するのは当時のものではなく、新しく複製されたリトグラフ(版画)やポスターであることがほとんどよ。
ポスターとリトグラフはどうやって見分けるの?
ポスターはわかるわよね?
リトグラフは限定数を表す「エディションナンバー」で見分けがつくわよ。
ミュシャの絵は
「本物の原画は世界に1枚だけで、それ以外のものは全部偽物」
という認識には当てはまりません。
もともと工業製品として、複数枚を制作する目的の版画だったからですね。
ミュシャが生きていた時代に制作され、ミュシャ本人の関与や承認があるリトグラフを「本物」とするなら、私たちが現在手に入れることができるのは、オリジナルをもとにリトグラフの技法を用いて制作された「複製画」と呼ばれるものです。
このような事情から、ミュシャの絵を飾って楽しむ分には、本物(オリジナル)かどうかにこだわる必要性はほぼありません。
ミュシャの絵を購入する際には、このあたりを理解した上で選ぶようにしましょう。
ミュシャの絵の相場と購入場所
とはいえ、ミュシャの絵は非常に人気が高いため、現在では低品質のポスターやプリントも世の中に多く出回っています。
購入する時にはそれらの違いを区別し、納得できる品質のものを選ぶことが大切です。
ミュシャの絵は
「複製されたリトグラフ(版画)」
「当時のオリジナル」
「ポスター」「プリント」「グッズ」
など、製造方法の違いや状態によって価格が異なります。
一般的な相場は、
- 複製された版画(リトグラフ):数万円から数百万円
- オリジナル(リトグラフ):百数十万円から数千万円
- ポスター(印刷物):額縁つきで1万円前後
このあたりでしょう。
私たちがミュシャの絵を購入する時は「複製された版画」(リトグラフ)を選ぶのが一般的です。
ミュシャの絵を購入する方法としては、以下の三つがあります。
- 絵画・美術品の販売サイト
- 美術品のオークション
- 美術画廊や美術館
- 絵画・美術品の販売サイト
-
インターネット上には、ミュシャの絵を販売しているサイトが多数あります。作品の画像や詳細な情報を見ることができ、気に入ったものをオンラインで注文することができます。
しかし、画像と実物の色や質感が異なる場合や、品質の悪いものが混ざっている可能性もありますので、信頼できるサイトを選ぶことが重要です。 - 美術品のオークション
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ミュシャの絵は、国内外の美術品のオークションにも出品されています。オークションでは、希少な作品や高額な作品に出会うチャンスがありますが、競争が激しくなる場合もあります。
また、オークションに参加するには、事前に登録や入札保証金の支払いなどが必要になる場合があります 。 - 美術画廊や美術館
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ミュシャの絵は、画廊や美術館などの実店舗でも販売されています。実店舗では、作品の実物を直接見て触れることができ、鑑定や保証も受けられます。
しかし、実店舗では、作品の種類や数が限られている場合や、価格が高めに設定されている場合があります 。
ミュシャの絵が版画であること、リトグラフの特性などをご理解いただけたでしょうか。
ミュシャの絵を購入する際は、品質の高いリトグラフをおすすめしたいです。
しかし、リトグラフの購入がハードルが高いと感じる場合、手軽に楽しめるポスターでも充分にミュシャの良さを味わうことはできますよ。
先日、百貨店で開催していた催し(アンティーク)で偶然ミュシャのオリジナルのリトグラフに遭遇しました。1800年代の終わり~1900年初頭に制作されたもので、値段は190万円前後でした。
オリジナルのリトグラフはサイズが大きく、正確にはわかりませんが140~150cmほどだと思います。家に持って帰るとさらに大きく感じるでしょうから、オリジナルを飾る場合は広いお部屋が必要ですね!
ミュシャの絵を販売しているオンラインショップ
ミュシャの絵を購入するなら、オンラインショップが便利です。オンラインショップは自宅から手軽に注文できますし、品揃えや価格も豊富です。
しかし、直接見て選ぶことができないため、ミュシャの絵をオンラインで購入するときには、安心できる信頼性の高いサイトを選ぶことが重要です。
ミュシャの絵の複製画を販売するサイト
ミュシャの絵を購入できるオンラインショップをご紹介します。
- グローバルアートギャラリー南青山
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多数の画家の作品を扱っている絵画販売専門店です。ミュシャの作品も厳選した海外のギャラリーから直接買い付けを行っています。額縁つきなのですぐに飾ることができます。
- 楽天市場
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楽天市場は取り扱っているミュシャの絵画の種類が非常に多く、見やすく探しやすいです。
画廊などで売り切れている作品でも楽天なら手に入る可能性が高く、ポスターから高品質のリトグラフまで、価格帯も幅広い品揃え。状態は新品・中古両方あります。
ただし、出店者ごとに品質や製造の状態が異なりますので、不明な点は事前にしっかりと確認するようにしましょう。 - アート&フレーム
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絵と額縁の専門店です。ミュシャのポスターを額縁とセットで購入することができます。種類が限られていますので、気に入った作品がたまたま見つかった場合や、手間をかけずに楽しみたい場合におすすめです。
- ヤフーオークション
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ヤフーオークションもミュシャの絵画が豊富に出品されています。希少なものや掘り出し物に出会える楽しみもオークションならでは。評価が高く信頼できる出品者から購入するようにしましょう。
ミュシャの絵は人気が高く、ポスターやリトグラフは限定数があるため、売り切れてしまうと次はいつ手に入るかわかりません。
気に入った作品が見つかれば逃さないようにしたいものです。
ネット販売に不安がある方は、ギャラリーなどの実店舗で、専門知識のある担当者と会話を交わしながら購入する機会を利用すると良いですね。
インテリアに馴染むミュシャの絵がどれか知りたい方は、下の記事を参考にしてみてね。
オンラインショップ利用の注意点
ミュシャの絵のオンラインショップの選び方と注意点です。
- 販売している商品の種類・価格を比較する
ミュシャの絵の複製画は様々なサイトで販売されていますが、商品の種類や価格はサイトによって異なります。自分の予算や好みに合った商品を探すために、複数のサイトを比較することが大切です。 - 商品の品質やサイズを確認する
ミュシャの絵の複製画は、画像や説明だけでは実物の品質やサイズが分かりにくいことがあります。
オンラインショップの場合は画像の色味や品質が実物と異なる場合があります。また、同じ絵であっても、商品によってサイズが異なる場合があります。そのため、商品の詳細な情報を確認することや、返品や交換の条件を確認することが必要です。 - サイトの信頼性や評判を調べる
ミュシャの絵の複製画をオンラインで購入する場合は、サイトの信頼性や評判を調べることも重要です。
サイトが安全であることや、商品の発送や対応が適切であることなどを確かめるために、サイトの運営者や連絡先、利用規約、プライバシーポリシーなどを確認することや、他のユーザーのレビューや口コミなどを参考にすることがおすすめです。
ミュシャの絵を販売している実店舗
ミュシャの絵を購入するなら、直接手に取って確かめてからにしたいと思う方も多いと思います。
実店舗であれば、色合いや雰囲気、サイズなどを実際に見て確認することができます。また、店員さんのアドバイスやサービスを受けることができるので、安心感がありますよね。
しかし、ミュシャのリトグラフは在庫が非常に限られているため、少し残念ではありますが、「ここに行けば必ずある」とお伝えすることは難しいです。
ミュシャの展覧会が催されているタイミングで美術館や博物館に足を運び、そこで購入する方法が現実的でしょう。
また、日本で唯一のミュシャ専門ミュージアムとしては、大阪・堺市にある「アルフォンス・ミュシャ館」があります。
- アルフォンス・ミュシャ館(堺市立文化館)
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大阪府堺市にある文化施設で、ミュシャの作品を常設展示しています。ミュシャのポスターや装飾パネル、スラヴ叙事詩などの代表作から、肉筆画や写真、書籍などの貴重な資料まで、約300点のコレクションを見ることができます。また、ミュシャの絵の複製画やグッズも販売しています。
実店舗でミュシャの絵に出会えたら
もし、運良くギャラリーや画廊などの実店舗でミュシャのリトグラフに出会えたら、それはとてもラッキーなこと。
気に入った絵があれば、是非前向きに検討してみましょう。
- 実物を見て品質やサイズを確認できる
ミュシャの絵の品質やサイズについて、実物を見て確認することができます。また、紙質や印刷方法などの細かい部分も確認できます。 - 鑑定や保証を受けられる
ミュシャの絵は貴重な美術品なので、真贋や保存状態を専門家に鑑定してもらうことができます。また、美術館や画廊では、作品の証明書や鑑定書を発行してくれたり、保証期間やアフターサービスを提供してくれたりすることがあります。 - 作品の背景や解説を聞ける
ミュシャの作品の背景や解説を聞くことで、より深く理解することができます。美術館や画廊では、ミュシャの生涯や作風、作品のテーマや意味などを説明してくれるガイドやスタッフがいることがあります。
- 作品の種類や数が限られている
ミュシャの絵は非常に人気が高く、希少なものなので、実店舗で見つけることができる作品の種類や数は限られています。自分の好きな作品や希望する作品がない場合もあります。 - 価格が高めに設定されている
ミュシャの絵は高価な美術品なので、実店舗で購入する場合は、価格が高めに設定されていることがあります。また、美術館や画廊では、入場料や手数料などの追加費用がかかることがあります。
ミュシャの絵を選ぶ際のポイント
さいごに、ミュシャの絵を選ぶ際のリアルなポイントと注意点についていくつか解説します。
あの…ミュシャの絵は有名だから、ほかの人とかぶらないかな?
確かに、ミュシャの人気作品はある程度決まっているから、そこはちょっと気になるわよね。
うん。あと、寝室とかに飾って、夜中に目が合ったら怖いかも。
心配性ね。でも、風水では寝室に人物画を飾るのはあまりよくないとも言うわね…?
結論としては、ミュシャの人気作品を購入しても、他の人とかぶる心配は無用です。私も周囲にインテリアやアートが好きな人間がいますが、自宅にお邪魔した際に、ミュシャの絵が飾ってあるのを見たことは未だにありません。
妙な心配はせず、自分の好きな絵を選びましょう。
また、確かにミュシャの絵は女性の目ヂカラが強めのものが多いので、こちらを向いている絵は見られている感じが少し気になるところ。風水で寝室に人物画を飾ることをおすすめしていないのも、視線が気になるためかと思われます。
リビングや廊下などであれば良いのですけれどね。
解決策としては、どうしても寝室に飾りたい場合、横顔の女性の絵を選ぶと良いでしょう。横向きであれば視線が合わないので、かなり軽減されると思います。
もちろん、そのあたりが気にならない方は問題ないと思います。
そのほか、具体的な注意ポイントを3つお伝えします。
どこに飾るかをイメージする
ミュシャの絵の魅力は、美しい女性と華麗な曲線、装飾的なモチーフが織りなすアール・ヌーヴォー様式にあります。ミュシャの絵を飾ると、部屋の雰囲気が優雅な雰囲気を纏うことは間違いありません。
そのため、自宅の中のどの部屋のどの場所に飾るのか、ある程度イメージしておいた方が作品を選びやすくなります。
額縁はセットで購入
ミュシャの絵のサイズは、作品の種類によって異なります。
もともとは街頭などのポスターとして制作されたため、当時のサイズはとても大きかったのですが、私たちがインテリア用として飾るポスターやリトグラフは大きくても100cm前後です。
ミュシャの絵は掛け軸をモデルにしたと言われている変則的な縦長が多く、市販の一般的な額縁の比率や寸法とは異なります。
ですので、ミュシャの絵を購入するなら、はじめからその絵に合わせた額縁がセットで販売されているものを選んだ方が後々楽です。
ミュシャの絵の真贋(品質)や保存状態を確認する
希少価値の高い絵画を購入する場合、真贋(品質)や保存状態の確認には専門家の鑑定が必要です。
ミュシャの絵は、石版画やリトグラフなどの版画技法で制作されたものが多く、そのために多数の複製が存在します。
真贋(品質)を確認するには、作品の署名や印章、版数や限定番号、紙質や印刷技法などをチェックする必要があります。ミュシャの作品を専門に扱う美術館やギャラリー、オークションなどの専門家に鑑定してもらうこともできます。
とはいえ、この記事でお伝えしてきたように、ミュシャの絵を楽しむのであれば、あなたが気に入った絵柄の作品を選ぶことが最も大切です。
まとめ
ミュシャの作品は浮世絵や日本の自然から多大な影響を受けており、日本では明治時代から人気が高かったと言われています。
ミュシャの作品は100年という歳月を経て引き継がれ、インテリアを飾るアートとして人気です。きちんとした品質のリトグラフであれば、次の世代にまで残すことのできる美術品でもあります。
ミュシャの残した美しい絵画に興味を持ったあなた、ぜひ気に入った作品を選び、アール・ヌーヴォーの巨匠の名作を身近に置いて楽しんでください。